坂村 健
公共交通オープンデータ協議会会長
INIAD 東洋大学情報連携学部 学部長
「公共交通オープンデータ協議会(略称ODPT)」は、多数の公共交通事業者、ICT事業者、学術機関が中心となり、2015年に設立されたNPOです。多数の民営化された交通機関が運行される日本において、公共交通データをオープンに流通させるためのデータプラットフォーム構築に向けて活動してきました。「東京公共交通オープンデータチャレンジ」は、私たちODPTが主催となり、2017年より継続的に開催してきたコンテストです。このチャレンジでは、多数の公共交通機関のデータを公開することで、外国人の方や障碍者の方を含む多様な人々が、公共交通機関を使ってスムーズに移動し、東京に快適に滞在するためのアプリケーションを、広く募集してきました。
今回の第4回チャレンジは、当初東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される2020年の秋までを応募期間としていましたが、コロナ禍を考慮し1年間期間を延長しての開催となりました。最終的には、鉄道、バス、航空、フェリーを合わせて計54社局の公共交通データのほか、駅構内図データ、人流関連のデータやシェアサイクルのデータなどが公開され、国内外から約1,500件の開発者登録がありました。厳正なる審査の結果、3本の最優秀賞、3本の優秀賞、3本の審査員特別賞が選ばれました。
2021年末の東京は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会も終え、少しずつ日常を取り戻しつつあるようにも見えますが、世界的に見れば未だコロナ禍の克服に向けた道半ばといった状況です。一方で、このような多難な時代こそ、デジタル技術やオープンデータは有効な武器の1つとなります。事実、国も東京都も、新型コロナウイルス感染症関連のデータを積極的に公開し、一般の開発者の力を借りながらオープンアプローチで社会をより良くすることに取り組んでいます。このような社会の新たな潮流を作り出すことに、本チャレンジや、それに参加いただいた多数の開発者の皆様が貢献した面は多々あるものと思います。本チャレンジ終了後も、継続的なデータ公開を行う「公共交通オープンデータセンター」を中心に、日本の公共交通データのオープンなプラットフォームを発展させるべく活動して参ります。
多数の作品をご応募頂いた開発者の皆様、また交通事業者の皆様をはじめ今回のコンテストにご協力を頂きました皆様に、厚く御礼申し上げます。今後とも、皆様方のご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。
宮坂 学
東京都 副知事
第4回東京公共交通オープンデータチャレンジにご参加いただいた皆様、多数の作品をご応募いただき、ありがとうございました。
前回に引き続き、今回も東京都は共催という立場で参加いたしました。2017年から先駆的にオープンデータチャレンジを開催されてきました公共交通オープンデータ協議会及びデータをご提供いただいている各公共交通事業者の皆様に改めて敬意を表します。
今回ご応募いただきました作品やアイデアの多くは、公共交通関連等のデータを活用することで、はじめて首都圏に来た方や障害のある方など、様々な方が、屋外・屋内・地下空間を問わず、スムーズに目的地までたどり着ける、そんな高度な都市サービスが提供されている姿を想像できるものばかりでございました。
東京都は、デジタルの力で東京のポテンシャルを引き出し、都民の誰もが質の高い生活を送る、東京版Society 5.0「スマート東京」の実現に向け、様々な取組を推進しています。都民生活や都市全体にデジタル技術を駆使し、東京が持続可能でスマートな世界で最もQOLの高い都市となるには、データが持つ力を最大限に活かすことが必要です。
そこで東京都では、データを社会全体で活用し、多様化する行政課題の解決を行うため、民間ニーズを踏まえ、行政が保有するデータを積極的に公開し、企業やシビックテック等がオープンデータ等を活用して新たなサービス創出を目指していく、官民協働スタイルを構築していきます。
また、民間企業等が新たなサービスを創出できるよう、今年度初めて都知事杯・オープンデータハッカソンを開催するなど、オープンデータ推進の機運醸成にも努めてまいります。
こうした取組を加速し、東京に住み訪れる多くの人々に利便性や豊かさを実感していただくため、引き続き、世界一複雑と言われる東京の公共交通のスムーズ化を目指し、鉄道、バス、航空など公共交通データのオープン化を進めている公共交通オープンデータ協議会等の取組を通じて、皆様とともに推進してまいります。
改めまして、今回のチャレンジにご参加いただきました皆様に御礼申し上げますとともに、会場にお越しの皆様のご健勝と、今後益々のご活躍をお祈りいたします。
坂村 健
公共交通オープンデータ協議会 会長
INIAD(東洋大学情報連携学部)学部長
第4回となる東京公共交通オープンデータチャレンジでは、これまで以上に高い完成度の作品が多く寄せられました。
厳正なる審査の結果、最優秀賞には3作品が選ばれました。「とらたる(2021年版)」は、過去の入賞作品をさらにブラッシュアップしたものですが、鉄道・バス・航空・フェリー・シェアサイクルを全て網羅しLINE bot 版も提供されるなど、特に充実した機能と完成度が高く評価されました。流動人口データと交通データを組み合わせて混雑を推定する「密予報」は、コロナ禍における三密回避の観点で高い評価を得ました。可愛らしいイラストが特徴の「Public Transportation Irregular Event Notifier(PIEN🥺) for Tokyo」も、「お堅く」なりがちな公共情報の発信に一石を投じるものでした。
優秀賞には、完成度やアイデア等の観点から、3作品を選びました。「鉄道の運行予測シミュレーションゲーム」は、鉄道の運行計画の擬似体験というコンセプトで作られたものです。列車位置から乗り換え列車を辿ることができる「トレなびV2」も、過去の入賞作品をさらにブラッシュアップしたものです。「タイムリー」は、近くのバス停のリアルタイムな到着時間を教えてくれるものです。
審査員特別賞には、「TiMAP ~東京時空間マップ~」「Mini Tokyo 3D 2021」「Tokyo LIVE Route Map」が、それぞれ選ばれました。
なお今回のチャレンジでは、民間企業のサービスからのデータ利用も可能となっています。その結果、「ジョルダン乗換案内」「NAVITIME」「Google マップ」「Citymapper Live Bus, Metro & Train Times」「Rome2rio」によりデータが利用されました。
今回のチャレンジでは、過去の作品を継続的にブラッシュアップした作品や、学生の皆さんによる完成度の高い作品が多かったことも、印象に残りました。皆様の努力に敬意を示したいと思います。
櫛田 泰宏
国土交通省
大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官
様々なデータをデジタル化し、誰もが自由に使えるようにするオープンデータ化を進めることにより、そのデータを活用して新たなサービスやビジネスが創出されたり生活の利便性が向上するなど、産業や生活が大きく変革されることが期待されています。
政府においては官民データ活用推進基本法に基づいてこのようなオープンデータ化を推進しており、国土交通省においても、デジタルによる行政情報の提供とともに、所管分野において関係事業者のご協力を得てオープンデータ化を推進しております。
公共交通分野は、情報提供を充実することにより交通機関をまたがった移動がしやすくなるなど、利用者利便の向上が大きく期待される分野です。今回応募頂いた作品では、複数の交通機関をまたがった路線検索や運行情報の優れた作品が多くあったほか、遅延や運休した場合の情報提供や混雑路線予想など危機管理にも有用な作品がありました。また、環境にやさしいルートの検索や、移動時間マップのように、社会課題の解決や様々なビジネスでの活用の可能性を感じさせる作品もあり、公共交通のオープンデータは、今後、移動利便性の向上に加えて、さらに幅広い分野で価値を生み出してゆくことが期待されると思います。
このような多種多様なアイデアを具現化された応募者の皆様の努力に感謝するとともに、国土交通省としましても、オープンデータ化の推進に引き続き取り組んで参ります。
高橋 葉夏
東京都
デジタルサービス局 データ利活用担当部長
たくさんの素晴らしい作品を審査させていただき、感謝しております。
東京都は、第3回から共催として参加させていただいていますが、今回も斬新な発想やより利用者視点でのサービス、海外からの応募など、行政の力だけでは実現できない作品が多数見受けられました。
どの作品も甲乙つけがたく、最優秀賞は3作品受賞となりました。
「とらたる(2021年版)」は、鉄道やバスのみならず、フェリー、航空便、シェアサイクルなど公共交通オープンデータをフルに活用し、UIもわかりやすく、高い評価となりました。「交通データ×流動人口データ」による「密予想」は、データのかけ合わせの可能性を大いに感じました。
「Public Transportation Irregular Event Notifier(PIEN🥺) for Tokyo」の、ユーザーフレンドリーな情報の伝え方は、都としても大変参考になります。
また、前回最優秀賞の「Mini Tokyo 3D」も大幅にバージョンアップされ、まさに公共交通のデジタルツインとも言える完成度の高さでした。
多くの方が利用している民間サービスにおいても、オープンデータをご活用いただいた便利なサービスが実装され、オープンデータ公開の意義を強く実感しております。
東京都は引き続き、オープンデータの魅力を高め、都民のQOL向上につながる新たなサービスを創出する官民協働スタイルを構築することを目指します。
改めまして、本コンテストにご参加いただきました皆様に御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
佐藤 勲
東日本旅客鉄道株式会社
技術イノベーション推進本部 ITストラテジー部門 部長
これまで3回開催された公共交通オープンデータチャレンジにおいては斬新な作品、公共交通機関をご利用になる方々に便利な移動を提供する作品や楽しい移動体験を提供する作品など素晴らしい作品が数多く応募されてきました。
第4回目の開催となった今回の東京公共交通オープンデータチャレンジは、東京オリンピック・パラリンピックの開催期間と重なるということもあり、普段東京を訪れない方に対して公共交通機関を使って目的地まで不便なく移動いただける環境を提供する作品が生まれることを楽しみにしておりました。結果、今大会も私の予想を遥かに超える大変多くの応募をいただきました。作品を一つ一つ拝見させていただきましたが、回を重ねるごとに応募作品のクオリティも高くなっており、ただ便利なだけではなく世の中に新たな価値を提供できる作品がとても多かったと感じております。今回の東京オリンピック・パラリンピックは残念ながらほとんどの会場で無観客での開催となりました。しかし、本来は楽しい「移動」を促す作品が本チャレンジを通じて生まれたことを大変嬉しく思います。
これまでの4回の公共交通オープンデータチャレンジを通じて、交通系データをはじめとする様々なデータを活用し、多種多様なアイデアを具現化された応募者の皆様の努力に感謝申し上げます。ありがとうございました。
最優秀賞 | とらたる(2021年版) | 亀田 遼希 |
密予報 | 羽田野 湧太・佐波 哲朗 | |
Public Transportation Irregular Event Notifier (PIEN🥺) for Tokyo | 草薙 昭彦 | |
優秀賞 | 鉄道の運行予測シミュレーションゲーム | 藤田 真理奈 |
トレなびV2 および列車遅延実績の可視化手法 | 奥田 顕浩・高橋 時市郎 | |
タイムリー | 石橋 貴生 | |
審査員特別賞 | TiMAP ~東京時空間マップ~ | nibbles |
Mini Tokyo 3D 2021 | 草薙 昭彦 | |
Tokyo LIVE Route Map | Mr. Hannes Junnila |
東日本旅客鉄道特別賞 | Human ~Human(人間)×Human(不満)~ | 同志社大学経済学部宮崎耕ゼミチームええもん 伊藤 早紀・高橋 陽梨子・谷郷 奈々美・林 龍之介・村松 亮 |
東京都交通局特別賞 | TobusR 2 | 白井 洋至 |
ナビ助 | imigner | |
東京バス散歩 | 小林 稜 | |
INIAD特別賞 | traffic viewer | 四直運用資料室 |
Tokyo TravelKit | 王 桐泽(Mr. Tongze Wang) | |
Tokyo Train Delay(東京遅延情報) | リンピポルパイブル チャノン(Mr. Chanon Limpipolpaibul)・堀口 紘平・押久保 秀英 | |
Densha of the Earth~環境にやさしいルート・目的地提案アプリ~ | 同志社大学宮崎耕ゼミ チーム アントレース 中村 彩夏・河野 恵輔・矢野 壮馬・永井 麻衣・新中 航輝・上田 貫太・加治屋 隆太・宮田 麗央・大久保 潤一・片岡 桃乃・山本 小百合 |
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ダイヤグラムメーカー | 石野 龍太郎・藤森 正也・小林 冬弥・尾崎 創・新井 裕生 埼玉大学工学部機械工学・システムデザイン学科 |
第4回東京公共交通オープンデータチャレンジでは、民間の営利目的のサービスにおいても、データの利活用が行われました。
ここでは、3社の会員企業、2社の海外企業によるデータ活用の事例を紹介します。
ジョルダン乗換案内 | ジョルダン株式会社 |
NAVITIME | 株式会社ナビタイムジャパン |
Google マップ | グーグル合同会社 |
Live Bus, Metro & Train Times | Citymapper |
Rome2rio | Rome2rio |